夜  話  
そんな神話の月が照らし出していた世界から、今わたしの目の前に広がっているような。


まるで童謡の世界をそのまま写しているかのような、この世界に。


「貴方は来てくれたのね。」


腕の中へと話しかけながら、わたしはまた眼下に広がる風景に目をやりました。


咲き乱れている菜の花は、吹き行く風とたわむれて、まるで楽しげにお話に興じているかのようで。


蓮華の花が絨毯のように敷き詰められている田んぼには、気の早い虫達が数匹せっせと飛び回っては働いていました。
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