夜  話  
「幻かと思った。」


手を伸ばせば触れることの出来る距離まで来た皎の姿に、なぜか胸を締め付けられるような思いを感じながら、わたしは言いました。


「幻……か?まぁ、そう、言えなくもないな。」


そう言って、少し笑いながら皎はわたしのいる窓辺へと腰掛けました。


「ここの世界に存在しないものであることは確かだからな。」


窓の向こうに昇った銀月を背におって、わたしに微笑みかけてくれた皎に、わたしは陶然としてしまいました。
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