夜  話  
「もう、逢えないと思っていたの。」


心をあたりに漂わせながら、わたしのくちからは、言葉が勝手にこぼれ落ちていました。


「ん?どうして、そんな事を思った?俺は約束したことは守ることにしているのに。」


その言葉を疑ったのかと、少しからかっているかのような皎の口調に、わたしのまなじりから、知らず涙があふれました。


「何故、泣く?」


驚いたように、皎は言って、そしておろおろと戸惑い、そ、と、手を伸ばして。


流れたわたしの涙を、少し冷たい指で、拭ってくれました。
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