大切な証
耶恵が複雑そぅに立っていた。
と思ったら勢いよく走り出し人混みに紛れた。


俺は夢中で耶恵の後を追って人混みの中手をつかんだ。

「わっ。びっくりした。よくァタシの手だって分かったね。」


弱く微笑む耶恵。

「ンなの、あったりまえだろが。何年幼なじみやってると思ってンだよ。お前の手くらい分かるっての。」


ホントは分かるはずなぃと思ってた。

「へへっ。すごいね。太一は。ァタシだって太一の手くらい分かるもん。」

ホントは思い出したくなかった。


ホントは夢なんかじゃないかって思いたかった。
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