追憶 ―箱庭の境界―
リオン様は、
リフィル様同様にお優しい。
どうしたら、
私を殺してくれるだろうか。
抵抗を繰り返す最中、
1人の男を、刺し殺した。
彼の唇が、微かに動く。
傍らに駆け寄った、紅色の魔力を持つウィッチに対しての言葉だった。
「…お前を…幸せに…したかっ…ただけな…だ…」
…私と、同じですね…
私も、リフィル様を幸せにしたかっただけなんですよ…
最愛の人を奪われた女は、
紅色の魔力で、
周囲の全てをなぎ倒し、私に向かってきた。
紅い光を纏った彼女の右手が、
私の喉を掴んだ。
そう…
私を殺して下さい。
紅色の魔力を求め、
その魔力で身を滅ぼす。
素晴らしい筋書きでしょう。
苦シメバイイ…
モット…
モット
憎しみが、伝わってくる。
死を望んではいた。
いざその時が来ると、
私は紅色の魔力に怯えていた。
でも、最期に…、
伝えねばならない事があった。
私は片手に持っていたリフィル様の心臓を、彼女に差し出して言った。
「…これを、リフィル様に…返して下さい…」
私は独りで…いい。