追憶 ―箱庭の境界―
しかし、
最愛の人を奪われた女は、紅色の魔力を暴走させているに過ぎなかった。
これまでの私と同じ。
「私を殺す」という目的の為に、自分を失っていた。
私の言葉は、
伝わってはいなかった。
暴走の最中、
紅色の魔力を纏う左手で、
リフィル様の心臓を、
潰そうとしていたのだった。
ま…待て…
待ってくれ!!
「――…や、止めろ!!潰すな!これはリフィル様の…!!」
彼女の手が、
心臓に触れる間際で、
「――それは、駄目だ!リフィルさんのだ…!アイリ!」
割って入った男の声が、
やっと耳元に届き、彼女の手が止まった。
暴走が止まる。
冗談じゃない。
リフィル様の心臓を守るべく、私は呆然とする彼女の右手から逃げ出した。
リオン様!
リオン様はどこに居る!?
私は彼を探した。
やはり、
私を殺してくれるのは、
リオン様しか居ないのだ。
そして…、
熱を増すリオン様と応戦し、
心臓を「奪われた」。
しかし、
私は生き残ってしまった。