なんでも屋 神…第一幕
「ヘヘヘ、私も一緒で良いって!」



そう言うと一葉は、俺が止めるより先に車に乗り込んだ。



後ろから付いてきたおっさんヤクザに、助手席のドアを開けられ俺も渋々乗り込む。



「おい、出せ。」



俺が車に乗り込むと、まだドアが完全に閉まっていないのに走り出す車。



「ちょっと待てよ兄ぃ。一葉を連れて行くなら俺は行かない。」



リアシートを振り返ると、除け者にされなかった事に喜ぶ一葉と、前を向いたまま黙って腕組みしている兄ぃ。



「心配すんな神、飯を食いに行くだけだ。それにこのお嬢さんがお前に付いていくと言ってる。俺にはどうする事も出来んよ。」



…嘘だ。兄ぃなら一葉を一喝すらなど容易い筈。[アポロ]に出した使いが思ったより長居をしてしまい、俺と会ってしまった事により、俺の機嫌を損ねたと思って咄嗟に一葉を保険にしたんだ。
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