なんでも屋 神…第一幕
流石は兄ぃの子飼い…俺と真っ直ぐ目線を合わせつつ、僅かな挙動にも注意を払っている。



「…分かった。先ずはお前の事から話そう。」



俺は辰徳と視線を合わせたまま、もう一度座椅子に座った。



「お前、[三谷組]が追ってこないのを不思議に思わないか?それだけじゃなく、夜逃げも簡単にこなせただろ。」



確かに…追ってきたのはグロリア一台だけだったし、あれ以降は追われている気配も無かった。



「お前が考えているように、俺達の取引は失敗した。いや、取引は成功したんだが、問題はその後だ。辰徳達は取引後、日本の巡視船と思われる船に追われた。だが此奴等も素人じゃない。逃げながら海にブツを沈めた。それも後から引き上げられるように、漁師の仕掛けている網の上にだ。」



巡視船と思われる…思われる?



俺が話そうとすると、兄ぃが手で制した。



「そうだ。後で調べたらその巡視船はダミー…。」
< 130 / 309 >

この作品をシェア

pagetop