なんでも屋 神…第一幕
後で思えば、狂っていた…この時の俺は人では無かった。けれど、誰しもが心の何処かに凶人を住まわせているのではないか…死ぬ事、殺す事、殺される事、その全てに恐れを持たない時は誰にでも必ずある。



問題は、凶人の住まいの扉を開けるか開けないか、ただそれだけだ。



兄ぃからは一週間前に連絡を貰っていた。そして俺は、尾行のとれる日を祈るような気持ちで待った。



そして尾行のとれた二週間後、兄ぃの手引きで深夜の食肉処理場に向かった。



廊下にかけてある防寒具を着て、分厚い冷凍庫の扉を開けて兄ぃの後ろを付いていく。



天井からぶら下がっているフックに、肉の塊の姿は無い。そこにあるのは、素っ裸で震え固まって身を寄せ合う花田等四人。



「あっ、アンタは[神堂組]の黒沢…さん。なぁ…同じヤクザ者同士じゃねぇか…た、助けてくれよ…。」



身体の芯まで震えている為、奥歯がガチガチと鳴って聞こえづらい。



兄ぃは優しい笑みを浮かべながら花田の前に歩いて行くと、一瞬で表情を消して花田の口を目が掛け、躊躇無しで蹴りを見舞った。
< 174 / 309 >

この作品をシェア

pagetop