なんでも屋 神…第一幕
そんなヒロの姿を眺めつつ歩いていると、向こうから大きな車体を揺らしながら近づいてくる一台の車。



「よぉ神、帰ってきたんだってな。あ、あっちにヒロも居るじゃん。どっか行くんだったら乗っけてってやろうか?」



話しかけてきた相手は、[cross]のメンバーだった奏(かなで)。安田大学病院の院長の一人息子で、自身も現在医大に在籍している。



昔は親父の金の力を駆使して、好き放題に暴れ回っていた。俺と出会ったのはその少し後…何があったのか詳しくは知らないが、奏が金に頼るのを止めて空手を習い始めた時だった。



恐るべきは、その生まれ持った学習能力の高さと凶暴性。一通りの型を習うと、ストリートで試してみたくなった時に俺と知り合った。



ボンボンが肩で風を切って歩いていると言う話しは、直ぐさま俺の耳に飛び込んできた。



一通り手合わせして感じたのは、空手の決まりきったような角張った動きに、自分の名前通りの滑らかな楽曲のような動きを加えて、完全にオリジナル化していると言う事と、負けても死なない燃えるような眼力の強さ。
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