なんでも屋 神…第一幕

「そのチャイニーズマフィアは、野心家な財津に目を付けて言葉巧みに騙した。恐らく、兄ぃと［神堂組］に恨みを晴らせる上に、ブツを山分けしようとでも言ったんだろう。」



…緊張で喉が渇く。地に足が着いていないかのように、今にも身体が浮いてしまいそうだ。



闇の中に埋もれていた真相を、白日の下に引き吊り出してくる俺の言葉に、後ろにいるノリの固唾を飲む音が聞こえる。



「その実、チャイニーズマフィアは違う絵図を描いていた。ブツを失って大打撃を受けた［神堂組］と［三谷組］を争わせ、あわよくば共倒れを狙い、どちらかが倒れたら自分達が動いてこの街の裏社会を牛耳ろうとした。」



隣で興奮気味に俺の顔を見上げ、毛虫のような眉毛をつり上がらせた仙海の鼻音が耳につく。



「そのチャイニーズマフィアのボスにとって誤算だったのは、俺の急な帰国。だから俺に警告の為、楊とタオを差し向けた。しかし、元来そのボスは挑戦心の強い男。そのボスの身の回りでも動きがあった…心酔していた兄貴の突然の死。それが拍車をかけ、俺に兄貴の陰を、亡霊を重ねて暴走した。」



ノリが懐からグロッグを取り出す動作に合わせ、俺も懐からベレッタを取り出した。