なんでも屋 神…第一幕

ルート上に有る店や、迂回ルートを何度も頭の中で繰り返して記憶する。


ほぼ完璧にルートを覚え終わる頃には、窓の外はすっかり暗くなっていた。



「よ、迎えに来たぞ。」



松が俺の事務所に初めて顔を出したのは、夜の十二時十分前。



二人共黒のスウェットを着て、靴屋の店先のワゴンで売っているような靴を履いて事務所を出た。


事務所ビルの前には、俺の注文通りのアコードが黒光りして停めてある。


夜なのではっきりとは見て取れないが、フェンダーアーチの後ろにはタイヤ滓が飛んでいた。



音も無く二人でアコードに乗り込んだ。事務所から二十分程車を走らせた所にある、住宅街に一ノ瀬の家は建っている。



幸いな事に一ノ瀬の家の裏には家が無く、直ぐ後ろはスーパーの駐車場になっている。