なんでも屋 神…第一幕
眠っていた松を起こし、電車を降りて深呼吸をした。



一日この街に居なかっただけなのに、ひどく懐かしい匂いがする。



タクシーに乗り込み、松の家である[松田自動車修理工場]へ向かう。



運転手と何気ない会話を交わしつつ、一ノ瀬の依頼金から五十万抜いて松に手渡す。



アコード代が五十万に、バイト料が百万。これが俺に出せる精一杯だった。



なんせ諸経費などをさっ引き、最終的に俺の手元に残る金は百万を切る。



二人で呑みにでも行こうかと思ったが、残念ながら俺と松にそんな体力と気力は残っていない。



二人の頭には、早く家に帰って眠りたいという考えしかない。



松の家に着いても、いつもの軽い冗談を交わす事すら無く松と別れた。
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