卒業
二年生 11月

風は随分涼しくなった。

もうすっかり暑さというものも忘れた。

━━━━そして、熱さも忘れた。

━━━━…いや、思い出さないようにしているだけ…?



━━━━やめよう。

いくら考えても、正確な解など得られない。

この問題を解くにはあまりに情報が足りなさすぎるのだ。



「じゃあ、この問題を削って…あれ?もう5時半か?」

先生は、腕時計を見ながら言った。

私は、先生の手首が目に入った。

血管や、どこか骨っぽい感じに思わずドキリとした。

私はもう、そう感じる気持ちに対して、否定しないようにしていた。

━━━…だって、そう思うものは仕方ないし、どうせ一時的な錯覚的感情なのだから……。

「あ、本当ですね。」

私は相槌を打った。

先生は窓の方を見た。





「もう真っ暗だな。」
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