卒業
ああ。

思わず、自分自身に呆れてしまう…。

その台詞の裏に、何か深い意味が隠されているんじゃないか、なんて…。

先生は、ただ何気無く言っただけなのに。



「もうプリントもほとんど出来たし、帰っていいよ。」

「あ、はい。」

私は椅子から立ち上がった。

先生も、プリントや問題集なんかを片付けながら立ち上がる。

「一人で帰るのか?」

え…?もしかして…

「はい。こっちの方面の子もいないんで。」

心配してくれてる……?

「大丈夫か?」

……ああ…。

「はい、大丈夫です。」

私は笑顔で答える。

「…そっか。気を付けろよ?」



心配そうに笑う先生の目が、脳裏にこびりついて離れない。





私には、それだけで充分です…。



ほら

うっすらと涙が滲むほどにも、嬉しい……。





暗がりの中、私は一人、
家路を辿った。
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