卒業
「え?」



「手が冷たい人は、心が温かいんだってさ。」



私は、流すように照れ笑いした。

「じゃあ、先生はどうなんですか?」







え?

先生は少し身を乗り出し、その手を私の手に伸ばしてきた。



「松居は、相当心が温かいんだな!」



私の氷みたいな手に、ぴったりと先生の掌が温もる。



…どうすればいいの…?





手が震えてしまうよ…。





すっと先生は手を離し、座りなおした。

「実はさ」

先生は笑顔で口を開く。








「妻も、冷え症でさ。」








一瞬、先生が何て言ったのか、よく分からなかった。

「よく、"心が温かいからよ"なんて言うんだよ。」



その表情が
とても好きな筈なのに。

何故だか、
無性に泣きたくさえ
なってきた…。





とりあえず私は、
笑った。
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