卒業
…私は、何を勘違いしていたのだろう…。



先生が学校にいる間だけは、独身でいる気がしてた。



実際には有り得ないと、理解はしていたけれど、限りなくそんな気がしてた…。




そしてまた、今日も一人で家路を辿る。

芯まで冷えているはずの手は、何故だかとても熱くて、私は祈るように手を組み、その拳にそっと唇を触れてみた。



先生は、会話の流れから、ただ何気無く温度を確かめただけ。

でも確かに、先生はこの手に触れていた。

その事実は、私を惑わせるだけだった。





二年生 3月

暖かな陽が射すようになってきた。

この間、卒業式があり、私たちは3年生を送りだした。

先輩たちは泣いていた。

━━来年、自分達があの立場になるのかと思ったりもしたが、どうも実感が沸かない。

━━…もうすぐ今年度も終わる。





━━━━私は、嫌な噂を耳にした。





"中林先生、今年でいなくなるんだって!"
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