卒業

Ⅱ 出会い

元々、数学は好きだった。

一年の時の数学の先生は、女の先生だった。
優しいし、綺麗だし、何より授業が分かりやすくて、大好きだった。
みんなからも人気者で、いつも生徒たちに囲まれていた。

だから、一年の三月、異動の話を聞いた時は、とてもショックだった。

そう、あの時は、とてもショックだった。





二年の四月。
新任の先生の紹介。



―…どれが数学の先生かな…?

私は、横一列に並んだ新しい先生たちを、一人一人見て、"あの人は英語の先生かな"なんて、予想を立てていた。



校長先生が、一人一人紹介してゆく。

この校長先生も、好き。

前、30過ぎの女の先生二人が廊下で話しているのを見て、「主婦の井戸端会議かと思った」なんて、冗談を言っていた。

私は、校長でもこうゆうコト言うんだ、と嬉しくなった。



「次に紹介しますのは、数学を教えて下さる、中林博忠先生です。」
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