卒業
先生は、私の課題をずいとのぞき込む。

ふわりと、先生の空気が"吹いた"気がした。

まるで、風が吹いたみたいに。

…こんなにのぞき込まれると、"もっと丁寧な字で書けば良かったな"と後悔してしまう。



自分の字をまじまじと見られる恥ずかしさ。

今にも触れてしまいそうな距離にある、先生の顔。

素直に心臓は暴れだす。



…私がどんなに必死で平静を装っているかなんて、先生は知らない。



視線はあくまで問題に置いているけれど、視界にはしっかりと先生が映り込む。





……綺麗な瞳。




それは、羨むほどの。





「松居、これ、どうやって解いた?」

この距離で、先生と目が合った。

私は自然に、少し距離をとった。



「えぇと、まず、これとこれの差を出して…」

私は、問題文を指して説明した。
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