ブラッティ・エンジェル
あってはならない真実
 自室に帰って来たサヨは倒れ込むように、ベットに横になった。うつぶせの姿勢のまま、目を閉じ手で顔を覆った。
 苦しい。
 その言葉がサヨを襲っていた。
 身体的に限界を示す苦しさと、精神的に胸を締め付けられるような苦しさ。
 せめて仰向けになろうと体に力を入れてみても、びくともしない。息をするのも少し辛い。なにがいったいこんな事にさせたのだろう?体が思うように動かなかったら、天使の仕事ができない。望に会うことだってできない。望の前では辛い姿は見せたくない。このままではいつまでも心を手に入れられない。
 サヨはもう一度体に力を入れた。しかし、状況は変わらなかった。
 悔しさから、視界が歪む。
 望の事を思うと涙が次々に流れ出した。
 しかし、またサヨの中で残酷な声が囁いた。
 思っているだけじゃダメなのよ。天使と人間は結ばれない。星司を見たでしょ。望をあんな風に苦しめてしまう。
 サヨの涙がぴたりと止まった。
 わかっている。そんな事。ずっと前から知っている。それなら…。愛しているからこそ…。
 サヨはクスッと可笑しそうに小さく笑うと、目を閉じた。
 もう目覚めないのじゃないかと思うぐらい、深い眠りについた。

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