ブラッティ・エンジェル
 「ゆずちゃん、やっぱり綺麗だよ~」
ゆずのところにきたサヨは、顔をゆるませていた。
 目の前にいる、純白のドレスに身を包んでいる今日の主役は、照れて目を伏せてしまった。
「ありがとう」
かわいいなぁと、サヨの顔はもっとゆるんだ。
 あんなに小さかったゆずちゃんが結婚かと、サヨはまるで母親になったかのように嬉しくなった。
 今日はゆずの結婚式にサヨは出席していた。
 お相手は言わなくてもわかると思う。まさか、こんなに早くだとは思わなかったけど。
「サヨさんもすてきっスよ」
白いスーツ。燕尾服だっけ?それを着たいつもよりまともそうな了介は、いつものナンパで使うような営業スマイルをしていた。肯定はしたくないが、かっこいい。だからなのだろうか?今までろくに仕事に就けなかった了介が、カフェも店員になれたのは。まぁ、家庭をもつのだから、定職に就いてもらわなくては。いつまでも、ゆずの給料で生活されては困る。
「こら。今日だけでもそれを言う相手はゆずちゃんだけにしなさい」
「大丈夫ッスよ。ゆずは俺が女たらしだってよく知ってますから」
「あんた、結婚するんだよ」
なんか、こんなやつとゆずが結婚するのだと改めて認識すると、不安になる。
 了介は友達にサヨのことを話していたゆずの肩に手を回し、自分の方に引き寄せた。もちろん、ゆずは驚いていた。しかし、お構いなしに、営業スマイルじゃない笑顔でピースをする。
「大丈夫ッス。俺はゆずが一番ですから」
「ちょっと…!」
一気にゆずの顔が真っ赤になる。周りで両方の友達の冷やかす声が聞こえる。
 なぜだか、サヨも恥ずかしくなった。しかし、安心した。
「おめでとう。二人とも」
サヨは心から、その言葉を二人に贈った。

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