ブラッティ・エンジェル
突然聞こえた声に、二人は言い争いを中断させ、振り返る。人ごみをかき分けてこっちに向かってくる、人影が一つあった。
「どうする。」
「逃げる。」
耳打ちしてくるユキゲにすぐ返して、サヨは人影に背を向け飛ぶ。その際、人間に見えないようにする。
 別に天使と人間が関わることは、禁じられてはいない。しかし、天使は人間に関わらない。人間が、嫌いだからだ。
 ユキゲもサヨも、その理由をしっている。が、どうしてそんなことで嫌うのかがわからない。でも、みんながそうだから、嫌うまではいかないが、深く関わらないようにしている。
 だから今も、必死で逃げている。
「待って!」
と、腕をつかまれ、空中でのけぞる。隣を飛んでいたユキゲが、少し行ったところで振り返る。
「ぅわぁ!」
「サヨ!」
完全にバランスを崩したサヨは、引かれるまま地に落ちていく。それをどうにかして止めようと、宙に投げ出された手を引っ張る。しかし、ユキゲの小さい体では、無理だった。
 ドスンッと派手な音を立てて、落ちた。近くにいた人間が、目を向け通り過ぎていく。地面に打ち付けた場所が、ズキズキ痛む。
 サヨはゆっくり立ち上がり、服を叩いて汚れをはらう。
「サヨ。こいつどうする?」
ユキゲは小さな指で、地面に伸びている少年の頬をつついている。
 サヨは、ギッと少年をにらみつけるが、表情はすぐ一変する。
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