G i f t ~ギフト~
私の中で自分と同じ名前を何度も何度も呟いた。


(吹雪?鈴原?いや・・・名前でしょ?吹雪。・・・・・・。)


「変な事言われたのか?」


心配そうな顔で私を覗き込む彼。


『え・・・?あ~。大丈夫だよ』軽く微笑み冷静を装った。


再び彼と手を繋ぎ目指した道へ戻る。


デパートに入る手前で私は思いだしてしまった。


さっきの女の人の事を・・・。昔の記憶を。


全身から力が抜けて彼の手を離してその場にしゃがみ込んでしまった私。


消したい記憶。


誰もがきっと持ってるものだと思う。


彼も消したい記憶だと思う。


女の人の名前【結城 吹雪】確か私の1つ上だったと思う。


(今更?今頃?またぁ?どうして?)


私の中で記憶だけがグルグル廻る・・・。


「大丈夫か?具合悪い?」


(あ・・・。余計な心配掛けちゃう・・・)


『ごめん。大丈夫』ゆっくり体勢を整えて彼の手を握った。


(今は・・・大丈夫。もう邪魔なんかさせない)


私は心で強く願った。この幸せが壊れないように・・・。


< 12 / 161 >

この作品をシェア

pagetop