-roop-
分かってる。
その言葉は…私の向けられたものではないって。
それでも少しだけ…
本当の私にも向けられたものだと思わせて欲しい…。
「私…誠さんのこと覚えてないんだよ…?」
分かってるよ…とばかりに、誠さんは穏やかな笑みを浮かべたまま静かに頷いた。
「…うん」
「想い出もないし…煙草だって吸えないよ…?」
誠さんはフッと小さく笑う。
「…うん…」
本当はずっと確かめたかった。
本当はずっと聞きたかった。
「……それでも……それでも私が目を覚まして…っ…嬉しい…?」
言葉の途中で耐えられずに一粒の涙が零れた。
私は此処に来たことは間違っていませんか?
私が貴方の傍にいることは間違っていませんか?
私が貴方を騙していることを許してくれますか?
聞きたいことはいくつもあった。
確かめたいことはいくつもあった。
だけど
私を千夏さんだと信じて疑わない真っ直ぐな貴方には…
それしか聞くことができなかった。
誠さんは切なさをこらえるように…悲しく笑った。