-roop-
誰が思うだろうか。
誰が信じるだろうか。
愛しい人の身体には、他人の魂が宿っていると。
顔も声も髪も変わらない愛しい人を…
誰が他人だと思いたがるだろうか。
どんなに私が千夏さんと違っても、
彼の中に千夏さんの想い出が生き続ける限り、彼は千夏さんを愛し続けるだろう。
傍にいるのが『千夏さん』である限り、彼は彼女を愛し続けるのだろう。
けれど
こんな風に真っ直ぐ見つめられて、優しく触れられて
いつだって自分のことを一番に考えてくれている
いくらそれが私に向けられたものではないと分かっていても
彼の視線と体温その優しさを
今、この瞬間に感じているのは…
世界中でこの私だけだということに、私は自分の胸が熱くなるのを認めずにはいられなかった。
「ただ…傍にいてくれるだけでいい……」
私の頬を撫でる誠さんの手が小さく震えていた。
胸が…心が…
…痛い…。
分かってる…分かってる…。
私が此処にいるのは…
千夏さんの中にいるのは…
誠さんと…千夏さんの約束を…果たすため……。