-roop-
「本当の地獄っていうのは…」
胸の奥が凛と澄む。
彼女は深い声で呟いた。
「………永遠の…孤独よ…」
「…永遠の………孤独…?」
彼女の口から吐き出された灰色の気体が、静かに空に吸い込まれた。
「…生前の記憶も持って行くことは許されず、転生することさえ許されない。
つまり…自分が誰なのか、何故此処にいるのか分からないまま、独りきりで闇の中をさまよい続けるの。
誰もいない。
何も見えない。
何も聞こえない。
何も分からない。
人間が味わえる最大の恐怖。
あれは…地獄へ行った者でないと分からない。
そして、一番恐ろしいのはその恐怖が…永遠に続くということ…。」
「生まれ変わることが…許されない…?」
彼女は最後の煙を吐いて頷いた。
名残を惜しむことなく、さらさらと煙は霧へとその姿を消してゆく。
私は…私は今だって記憶が全くない。
だけど…
だけど、これが救われることなく永遠に…?
しかも…独りで…?
私の体が一瞬凍り付いた気がした。
想像を絶する永遠の孤独…。
握りしめた手の平に、少し冷えた汗がにじんだ。