-roop-
「…今の…千夏もだよ…?」
耳元に響く少し、恥ずかしそうな声…
「…お前が笑ってくれるだけで……傍にいてくれるだけで……本当に俺は…何度だって救われた……」
「『私』……?」
ふと身体を離して、互いの瞳を見つめ合う。
誠さんは愛おしむように私を見つめ、優しく囁いた。
「…今のお前も………俺の生きる理由だから……」
今の…千夏さんも…『私』も…?
私は信じられないといったような顔で誠さんを見つめる。
「わ…私……出逢った時のこと……覚えてないんだよ……?」
誠さんは優しく頷く。
「誠さんが……どうやって私を救ってくれたのか……知らないんだよ…?」
「…あぁ……」
「それでも……そんな私でも………」
「くっ……」
誠さんは急に吹き出して笑った。
「な…?」
キョトンとする私に、誠さんは小さく笑いを堪えながら言う。
「なんか……前にもこういうことがあったなぁ…?」
「あ……」
--『私…誠さんのこと覚えてないんだよ…?』
『…うん』
『想い出もないし…煙草だって吸えないよ…?』
『うん…』
『それでも……それでも私が目を覚まして…っ…嬉しい…?』--
分かる…覚えてるよ……。
『私』と誠さんにも共通の想い出があるんだ…。
『あの時』…そう言って伝わる場面があるんだね…。
『私』が消えた後も、少しでいいから…ほんの少しでいいから思い出してくれますか…?
偽物だけど
まがい物だけど
それでも愛した人として
『私』を…思い出してくれますか…?