-roop-
『えー…んんっ…じゃー…最初で最後だからな!…もう二度と言わないからな!』
『はいはい!ちゃーんと心を込めて言ってよー?』
『当たり前だっ』
頬を染めてあらたまる誠さんを、撮影しながら笑う千夏さんの声が聞こえる。
『えー…岡崎千夏さんっ!…柏木…千夏になって下さい!』
『え、ちょっとー!さっき星見ヶ浜で言ってたのと違うじゃなーい!』
『なっ…えっ…同じことまた言うの?』
『あれがもう一回聞きたいの!』
『…今のも頑張ったんだけどな……』
そう呟きながら首を傾げる誠さんを、千夏さんは早く早くと急かす。
『えー……千夏……どんな時も…俺が命懸けてお前のこと守るから……あの時……死んだりしなくて良かったって…お前が心からそう思えるように…俺は何があってもお前の傍にいるから……だから…俺と結婚し…』
『……っ……』
画面には映っていない人の、声を押し殺して泣く音が聞こえた…。
『…っておい……泣くなよ……』
ビデオカメラには千夏さんに近づいた誠さんの身体だけが映されていた。
『だって……私……私あの時……誠に逢ってなかったら……っ…』
『…でも実際逢っただろ?こうしてお前は此処で生きてるだろ…?』
『誠……私……私…』
プツッ
ザーー………
そこで、ビデオは止まっていた。