-roop-

『俺に何言えっていうんだよー』


画面に映し出されたのは、呆れ顔でそう言う誠さんの姿だった。

さっき見た写真みたいに、今より少しふっくらしてるみたい…。


すごく…生き生きしてる…。


愛する人の目の前で、これから生涯添い遂げる愛しい人の前で、

とても…とても幸せそうだった…。



『じゃあ~もう一回カメラに向かってプロポーズしてっ』


『はぁ?勘弁してくれよ~』


苦笑いを浮かべる誠さん。


『いーじゃない!いつか私たちの娘に見せるの!こんなクサい台詞言う旦那さんはダメだよ~って』


『っておい!最初の子供は男の子がいいって言っただろ!』


『あははは!誠、どこに怒ってんのよ~!』


声から…表情から溢れてくる…果てしない…限りない想い…。


愛し愛されて…お互いのことが大切で仕方がないんだね…。


ズキン…




微かに胸が痛んだ。



千夏さんと同じ姿をしてるのに

千夏さんと同じ声をしているのに

この映像の中のことを…私は何ひとつ知らない…。


貴方が千夏さんを愛した理由を

千夏さんが貴方を愛した理由を





私は…知らないんだ…。
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