-roop-

私は誠さんの真剣な眼差しに答えるように頷いた。


「はい……」


「わー!!敬語は止めて敬語はー!やっぱり、さん付けがギリだー!」


突然頭を抱える誠さん。


「敬語はなんか首の辺りがゾ~ってすんの!」


笑いながら身体を震わせる素振りをする誠さんが、何か可愛くて私は思わず笑った。


すると、誠さんは振り上げていた手を下ろして、安堵したように声を漏らした。




「良かった……笑ってくれて……」


「……」


誠さんは静かに席を立ち、軽く私の頭を撫でた。



「…お祝い…しなくちゃな…」


見つめる熱い視線と、頭から感じる体温。



彼が見つめていたいのは私じゃないのに

彼が触れていたいのは私じゃないのに



彼の視線と体温を感じているのが彼女ではなく私だという矛盾に、また少し罪悪感を覚えた。

誠さんは、私の頭を軽く二回叩いて言った。




「…とすれば御馳走の用意だな!まぁ…たぶん買って来たやつばっかになると思うけど……
今日と明日で準備して……そうだな、明日の昼過ぎに迎えに来るよ。」


「う、うん…」


私が戸惑いながらも小さな笑顔で微笑むと、彼も笑顔で答えた。




「じゃあ…明日な」


彼はそう言ってもう一度私の頭を軽く撫でる。

私に気を遣ってか、遠慮がちに触れるその手にまた胸が痛んだ。





カサッ

彼が私の背を向けた途端、彼のジーンズのポケットから何かが落ちた。


「おっと…」


誠さんはしゃがんでそれを拾い上げる。


「あっ…」


そして起き上がった彼が持っているものを見て…私は思わず声をあげてしまった。
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