空色幻想曲
酷い顔だった。
涙でぐしゃぐしゃになった顔ではない。
怒りに煮えたぎった顔でもない。
悔しさに歪めた顔でも、傷つき疲れた痛々しい顔でもない。
その顔には、表情と言えるものが一つも見て取れなかった。
高貴な青玉の瞳は、いつもならば満天の星空のように眩く美しい煌めきを湛えているはずなのに。今は深淵の闇を映し、透き通った青さが失われていた。
暗く色褪せた両目でいったい何を見ているのか。どこを見ているのか。
いや、何も見ていない。どこも見ていない。
俺の姿さえきっと映っていない。
瞳を開けているだけで
呼吸をしているだけで
冷たくなっていないだけで
……生きてはいない。
力無く虚空を仰いでいるティアニス王女の形をした抜け殻がそこにあった。
泣けばいいのに。
それすらできないほど彼女は心の逃げ場を、自分の存在価値を、見失ってしまったのだ。
『足手まといだ!!』
──なんという言葉を浴びせてしまったのだろう、俺は。
あのときは、ああ言わなければ彼女が危険を冒すかもしれないと思った。このジャジャ馬姫ならばこれくらいキツイことを言っても堪えない。
と思ったが──
彼女の心の強さを完全に見誤っていた。
彼女を護るために放った言葉が、彼女の心を深く深く傷つけた。
もっと言葉を選べば良かった。戦闘時で余裕がない状態といえども、他の言い方があったはずだ。
己の不器用さを呪った。