君の声が聞こえる
整いすぎた美貌はどこか儚げで、彼女の周りで舞う桜の花びらと一緒に、いつ消えてしまってもおかしくないような気がした。

 彼女が僕の視線に気付いたのは、それからしばらくしてからだった。

自分でも気付いていなかったが、僕は惚けたように長い時間彼女を見つめ続けていたようだ。

不思議そうに見つめ返す彼女の目がとても印象的だった。

不意に、彼女の唇が動いた。

微笑みを浮かべたのだ。

それはとても綺麗で、この世のものとは思えない微笑みだった。

「ここの学生?」

 静かなのに、芯のある声だった。

耳に心地よく、彼女の天使のような姿とその声はとてもよく合っていた。

「うん」

 そう答えるのがやっとだった。そんな声でさえ、震えているように思える。

「そう。もしかして、一年生?」

「うん」

「うん、しか言わないのね」
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