君の声が聞こえる
それは死んだ人間にかける言葉には不適切だったかもしれないけれど、私もその言葉に深く頷いた。
「雅巳は大切にされていたから……」
誰になんて口にするまでもない。喪主を勤める彼女の夫の姿を見れば、誰でもその事を理解するだろう。
憔悴しきった若い彼は自分の妻から一秒も目をそらす事はなかった。
弔問客に挨拶している時でさえも視線は、そちらに向いたままだ。
「そうね。雅巳ちゃん、後悔なく生きられたのね」
お母さんの言葉は真実をだと思う。雅巳は後悔なく生きられただろう。
それでも、その言葉に私は頷く事が出来なかった。
まだ二十歳という若さだ。
二十歳の誕生日を迎えたばかりの女の子が短い人生に幕を閉じたのだ。
それに対して後悔ない人生が送れたと言えるのだろうか?
まだまだ、これからだった。
生まれたばかりの赤ん坊を置いて逝かなければならなかった雅巳が後悔なく生きられたなんて言えるのだろうか?
式が終わり、帰ろうとする私の元に雅巳の母親が走り寄ってきた。加藤君は喪主の席で正座したまま、動かない。
これからお清めがあるのだろうが、あの様子ではそれも雅巳のお母さんが取り仕切る事になるのだろう。
「雅巳は大切にされていたから……」
誰になんて口にするまでもない。喪主を勤める彼女の夫の姿を見れば、誰でもその事を理解するだろう。
憔悴しきった若い彼は自分の妻から一秒も目をそらす事はなかった。
弔問客に挨拶している時でさえも視線は、そちらに向いたままだ。
「そうね。雅巳ちゃん、後悔なく生きられたのね」
お母さんの言葉は真実をだと思う。雅巳は後悔なく生きられただろう。
それでも、その言葉に私は頷く事が出来なかった。
まだ二十歳という若さだ。
二十歳の誕生日を迎えたばかりの女の子が短い人生に幕を閉じたのだ。
それに対して後悔ない人生が送れたと言えるのだろうか?
まだまだ、これからだった。
生まれたばかりの赤ん坊を置いて逝かなければならなかった雅巳が後悔なく生きられたなんて言えるのだろうか?
式が終わり、帰ろうとする私の元に雅巳の母親が走り寄ってきた。加藤君は喪主の席で正座したまま、動かない。
これからお清めがあるのだろうが、あの様子ではそれも雅巳のお母さんが取り仕切る事になるのだろう。