君の声が聞こえる
その姿は見ている私の方が苦しい気持ちになるほどだった。

 具合が悪いんだ、という事に気付いた私はパニックを起こした。

 こういう時、一体どうしたらいいんだろう?

 パニックを起こし、どうしたらいいか分からなくって私がオロオロしているうちに雅巳の様子が変わってきた。

苦しげな表情が和らいで、顔色も少しずつ良くなってきたようだ。

 その時になって、ようやく私は自分が何をするべきなのかを思い出した。

 そうだ、誰か先生を呼んでこなくっちゃ!

「私、先生を呼んでくるね!」

 雅巳に、そう告げてその場を離れようとする。しかし、雅巳の手が私の足首を掴んだので、その場から動けなくなった。

それどころか、もう少しで転ぶところだった。

「駄目!もう大丈夫だから誰も呼ばないで!」

 雅巳が鋭い声で私を制した。

 私は雅巳が大きい声を出したのを初めて目の当たりにした。驚いて雅巳の顔を見ると、顔色がほぼ通常と変わらなくなっていた。

「もう大丈夫」と言ったのも強がりではないようだ。左手で左胸を押さえたまま、ゆっくりと立ち上がった雅巳は、体全体で深呼吸を繰り返し、息を整えていた。

「苦しいんでしょ?先生を呼んだ方が……」
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