禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~

「…。」


返す言葉が見つからなくて。


ギュッと握り締めた手。


ただ悲しくて震えるしか出来ない体。


…涙は。


悔しすぎて出すことも忘れた。


「さあ、新しいお家に帰りなさい。」


ニッコリと微笑んで、ドアを指差した。


「そんなの…。」


ボソッとつぶやいた。


「なに?」


不思議そうな顔をしてる母親。


「そんなの、神楽が許さない!!」


キッと思いっきり母親をにらんだ。


前に宮埜が言ってたもん。


神楽が政略結婚なんて許さないって。


「全く…どこまで夢を見てるんだか。」


深いため息をついた。

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