禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~

「逃げれるわけないだろ?」

「弱虫!!」


まるで、神楽に投げつけてるみたい。


思いっきり叫んだ。


「いいか?神楽もオレも、何十人何百人何千人何万人って人間の生活を背負っているんだ。自分の感情で、そんな人達の生活を壊せない。路頭に迷わせるわけにはいかないんだ!!」


しっかりとあたしの肩を掴んで。


真剣な眼差しで目を見た。


「だからって、こんなのって…。」

「それがトップに立つ者。頼むから…。」


うつむいた宮埜の頬に、一滴の涙がつたい落ちた。


宮埜も苦しいんだ。


苦しくて苦しくて…。


それでも吐き出すことが出来なくて。


逃げ出すことも出来なくて。


自分の中で、納得するしかないんだ。


…こんな馬鹿げたこと。


全部、アイツのせいだ!!


スッと立ち上がると、勝手に走り出していた。






< 279 / 341 >

この作品をシェア

pagetop