雨がやむまで

「おんやぁ?図星?」
「…瑞樹はどーなのよ」
「ちょっ…そこで返すかぁ?」

『そりゃないよ』と言いたげな瑞樹の顔。

私は笑いを洩らして
缶に残るビールを口にする。

質問の答えはなんとなく…



「んーまぁ…好きな娘はいる…よ」

…知ってる気がしてたから。


「…そか」


『誰』とはさすがに
聞けないけどさ。


それを知ったからって
きっと私は

その娘への想いを聞く事も
協力する事も出来ないから。


…嫌な女だ。


「好きな娘いるなら、そのふらふらする野良猫みたいな癖治しなよ。誤解されるよ?」
「…そういうもん?」
「さぁ。普通は嫌がるんじゃない?」
「しおは普通じゃないみたい」



クスクスと悪戯に洩れた笑い声。
私はちょっと膨れっ面になり


「敢えて普通とは言わないさ」


そう吐き捨てる。



「でーもさっ。栞ちゃん」
「ん?」
「俺のそういう行動だって、もしかしたらその娘の気を引きたいだけかもよ?」
「そう?違うでしょ」



私がさらりとそう呟くと
瑞樹はやけにキョトンとした顔を向け

今度は犬みたいに
大きな瞳を瞬かせた。



「…なんで?」
「瑞樹は色んな世界が欲しいタイプでしょ?友達は友達、バイトはバイトーみたいに」
「うん」
「だからそれで嫉妬する娘より、それを纏めて受け入れて貰える娘がいいんじゃないの?」


言い終えた私は
缶の底に残るビールを飲み干し

『違う?』と首を傾げた。


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