雨がやむまで
「…適わないなぁー栞ちゃんには」
瑞樹は溜息と一緒に笑いもこぼし、ずっと離さなかった缶を床に置いて
自身も身体を横たえる。
「適うと思ってた訳?」
「ビミョーに」
「ほーぉ?甘いよ瑞樹クン」
よっぽど悔しいのか
瑞樹は右に左に身体を転がし
時折唸って
突然ガバッと起き上がった。
「─!どうかした?」
「腹減った。ラーメン喰いてぇ」
「えぇ?何を突然…」
「だってもう雨音聞こえないし」
言われてみれば
さっきまで煩く夜を叩いていた雨の音は
聞こえなくなっていて
私はおもむろに立ち上がり、さっき閉ざした窓を再び開けた。
「ほんとだ。大分小降りになってるね」
なんて気まぐれなにわか雨。
もう少し降ってくれてもいいのに。
「まぁじで?んじゃやんだら行こうかな」
私はこいつの食欲にも負けるのか─
「栞ちゃんは?腹減ってない?」