雨がやむまで
─え?
「腹っ?…はー…」
「もう食べちゃった?」
「まだだけど…」
「どーよラーメン?」
…不意に。
ほんと不意に
瑞樹はこういう事を言う。
私をムカつかせながら
「…餃子も食べたい」
またひとつ
好きにさせる…
「んじゃ決っまりー♪あそこの塩ラーメン美味いんだ」
「あんたいっつも塩ラーメン食べるよねぇ?醤油も美味しいのにー…」
「いーの。俺はしおが好きなの」
…カラカラと窓を閉めて
外が見えるように
少しだけカーテンは開けたまま
私は冷蔵庫へ向かい
缶ビール2本取り出した。
「雨がやむまで。も1本どう?」
「栞ちゃんさーすがっ」
笑いながら差し出した缶を求めてきた手は
掴んだ拍子に
私の指にも微かに触れる。
その瞬間。
瑞樹は少し含んだ笑みを私に寄越した。
「…何?」
…雨がやむまで
あと、僅か…─。
