DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
だが、ミカエルが言った姉妹とはウリエルのことだけではない。
(また、泣いてる……)
頭の奥に感じた気配に、ミカエルは遠い空へと目線をなげかけた。
軍が公表しなかったもう一人の姉妹。
(ルシフェル)
ミカエルがアイアン・メイデンとしての生を歩みはじめたと同じ頃に姿を消した、もうひとりの守護天使。
何故かミカエルには、会ったこともない彼女のものと思われる思念を感じることが度々あった。
他の姉妹達は感じないようだが……
それが何故なのかはミカエル自身にもよく分からない。
ただ、その思念の波を感じるたびに自分の中の何かが揺らぐことが、ミカエルには興味深かった。
(待ってて、もうすぐ会いに行くから)
遠い空のかなた、何処かにいるはずのルシフェルへと胸のうちでつぶやき、ミカエルは再び民衆へと視線を戻し、車上から手を振る。
正に天使のような笑みを浮かべて――
そしてその姿に、再び道路脇からは歓喜の声があがった。