DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>


「カイゼル将軍、王妃様がお待ちです」

「うむ」

男が豪奢な絨毯の上に足を踏み入れると同時に扉は閉められる。

先に立って案内する細い背中にむかい

「調子はどうだね? ラファエル」

声をかけると、ラファエルはほんの少し足を止め、カイゼルが並ぶのを待った。

「変わりありません。あなた方が与えてくださったこの体はとても優秀です。体調を崩すこともありませんから……」

並んだ男の顔を見上げてラファエルは応える。

「そうか。それはなにより」

頷きながら満足そうに微笑む男。

カイゼル・シュトルツ……エルカイザ軍総司令官。

リチャード王健在中から王の右腕としてエルカイザ軍をまとめてきた男。

王が静養に入ってからは、かわりに国をとりしきる王妃の支援をし、コーエンと共にアイアン・メイデン開発に携わり、自らその人選を行ってきた。

一見穏やかそうな表情をいつも湛えてはいるが、その目の奥にある鋭さは常に絶える事は無い。

元々リチャード王の親友だったというから信頼も厚いのだろうか。

王妃は彼の面会は断らない。

この人気のない城へ頻繁に出入りする、数少ない人物の一人だ。


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