DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「任務自体が不満なわけじゃない。軍人だからな」
吐き出すようにそう言い、だが、これ以上アレックスと言葉を交わすのも嫌になったのだろう。
ボルグは口を閉じて腕を組み、荷台の壁に背を預け仮眠の体勢へと移った。
その様子を黙って見ていたアレックスだったが、ボルグが何故そんなに自分を疎むのか、理由などわかるはずも無い。
会うのもまだ二度目だというのに。
(……よく、わからないな)
心の中でそっとつぶやき、ボルグから目線をそらす。
そらした目線の端。
ふと、自分の隣に座ってる兵士が、膝をかかえてカタカタと震えているのを捉えた。
「……どこか具合でも?」
これから任務だというのに体調が悪いにも関わらず召集された者が居たらしい。よほど人手が足りなかったのか……具合が悪いのなら目的地についてもトラックに待機させるべきだ。
どんな状況下もわからないが、緊急の召集がかかるほどの事態が起きている場所で他人を気遣う余裕などないはず。足手纏いになる者は連れてはいけない。
そんなことを考えながら声をかけると、兵士はアレックスの方へ顔を向け、力なく……だがはっきりと首を横に数回振った。
「リエーネは……故郷なんです。今も母と妹が住んでる……一体何があったと……」
瞳いっぱいに不安の色を浮かべた兵士は、アレックスとあまり年が違わないように見える。
最近兵役についたばかりだろうか……
軍服の胸に小さく結いつけられたタグには<マリウス>と名前が刺繍されてある。どうやら体調が悪いわけではないようだが明らかに動揺しているのが見て取れた。
任務中は冷静な判断を求められる場面に逢う事も多い。今からこんな様子では任務に差し支える。こんな場合は少しばかり熱を冷ましてやらねばならない。
自分自身がそういう動揺とは縁がないため効果の程はわからないが、こんな時にかけるべき言葉は多少なりともパターンは把握している。試す価値ぐらいはあるだろう。
「マリウス……行ってみない事にははっきりしたことはわからない。落ち着いて」
アレックスが静かにそう言うと、マリウスは震えを止めるためか膝を抱く腕に力をこめながら、無言で頷いた。
ありきたりの言葉でも少しは効果が期待できそうだ。