DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
だが、肩を叩かれた兵士は一瞬ピクリとしたものの、動く気配がない。
「……?」
横から顔を覗きこむと、その兵士は先ほどアレックスの隣で震えていたマリウスだった。
前方で燃え盛る町を見つめる瞳は光を無くし、虚ろだ。
ちいさな声で何かつぶやいている。
「マリア……母さん……マリア……」
さっき話していた妹の名だろうか?
マリウスはその二つの単語を繰り返しつぶやいている。
「マリウス……行かなくては」
再度声をかけながら肩を揺らすと、マリウスはゆっくりとアレックスの方へ顔を向けた。
「行かなくては……マリア……母さん……行く……今すぐ……マリア……」
「マリウス?」
何かに憑かれたかのような表情のマリウスにアレックスは眉根をひそめて名前を呼んだが、マリウスはそれには何も反応せず、だが、ゆっくりと町へ向かって歩き出した。