DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「あなたこそ、食事は終わったの? ジュード」
闇から現れた黒い影は、するりとミカエルのそばまで移動して、その目の前に立ちミカエルを無言で見下ろす。
「食べ残し、ついてるわよ」
頭ひとつ分高い位置にある、男の唇の端から溢れて伝う血を、白く細い指先で拭い取るとミカエルはクスリと笑った。
「あいかわらず、浮かない顔してるのね」
「まあ、な」
そう短く答えると、男はミカエルの顔から目線をそらし、地面に横たわる兵士の屍を眺めて小さく息をはいた。
その瞳は先ほどまでの赤い光は消えうせ、深い青い色へと変化している。
「あいかわらず、容赦なしだな」
ジュードのため息混じりの言葉を聞くと、ミカエルは再びクスリと笑いを漏らし
「だってあたしは国を守る守護天使ですもの、敵兵に情けなどかけないわ」
そう言って右腕を軽く振り、そこから伸びる剣先に付着した血液を飛ばしてコートの裾でぬぐうと、手首を軽く押さえた。