DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「はい。ディーヴァ様」
深く頭を垂れ、踵を返したところで
「ラファエル」
再び王妃に声を掛けられ、ラファエルは足を止め振り返った。
「分かっていますね。何を言われても聞いてはなりませんよ。一見大人しく誠実そうに見せていても、所詮あの男も王の地位が欲しいだけの欲深い輩です。あれの兄と同じように……覚えていますね? あれの兄が何をしようとしたか」
「はい。忘れていません」
一度目が合えば、誰もがひき込まれずにいられない大きな黒曜石の瞳をまっすぐに見つめ、ラファエルは頷いた。
「かわいそうなリチャード王……心許せる存在であるはずの肉親にすら裏切られ……あの日の王の嘆きようを思い出せば私は今でも身を切られそうな痛みに襲われます。あんな思いを二度と王にさせるわけにはいきません」
美しい顔を苦しげに歪ませ、王妃はそう言うと小さくため息を落とし、続けた。
「私はこの方を……この国を守りたいのです。地位や名声への欲だけのために王となる人間にこの国をディラハンから守るなど到底できやしません」
「心得ています」
悲痛な表情で、カーテン越しに眠る王の方へと視線を移した王妃は、短くそう答えたラファエルに
「頼みますよ」
再度重ねるように告げた。
向けられた背。か細い肩が僅かに震えているように見える。