DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>


「家族を失うって……そんなにつらいものですか?」

ぽつり、と漏れたアレックスの言葉に、ボルグが首をかしげた。

「どういう、意味だ?」

「ルーシーは、そのために自ら命を絶ったのでしょう? 実際、彼女と初めて会った時から彼女は狂っていた……母を返せと、弟を返せと、味方であるはずの俺に彼女はそう言った」

「ああ、家族は皆死んだと聞いてる。かなりつらかったろうな……もっとも俺は幸い家族は皆健在だからな、実際亡くした人間の気持ちが完全にわかるわけじゃないが、想像はつく」

ボルグの答えを聞きながら、アレックスはグラスをテーブルに置き、小さくため息をついた。

「俺には……想像すら出来なかったんです。彼女が何故気を狂わせたかも、マリウスが燃え盛る家に飛び込むことも……」

グラスの底で揺らめく琥珀色の液体に、あの日の光景が映る。

「分からなかった……」

独り言のように紡がれる言葉。


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