桜花散恋

椿






冬の冷たい風が吹き荒れる師走の昼下がり。




葉月は、あまりの寒さに大量の着物を重ねて羽織り、自室に置いてある火鉢の前で体育座りをしていた。




パチッと火鉢に入れた炭が弾ける音が、シーンとした部屋に響く。





いつもは賑やかな屯所は静かだった。




それもそのはず、隊士たちのほとんどが巡察に出払っていて屯所内にいる人は少なかったからだ。



なぜ、隊士たちが出払っているかというと…普段は、組が交代で行う巡察をここ最近は、ほぼ全隊士で京を回っているからだ。


それを不思議に思った葉月が土方に聞いたところ・・・




『師走は年末ということもあってか、日本各地から人が京に集まる。帝がいらっしゃる京とはいえ、当然、物取りや暴漢もけっこういやがるんだ。だから、そいつらを取り締まって治安を維持するために、こうして全隊士を総動員してるわけだ』



と、教えてくれた。



少なくなってきた火鉢の中の炭を掻き混ぜながら、
巡察に出ている隊士たちのことを思い、葉月は感傷に浸っていた。






―――・・・現代から幕末にタイムトリップしてしまった自分。














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