エリートな貴方との軌跡
だけれど誤魔化されれば疎外されたようで、この時ばかりは不機嫌になりたいのに。
あれこれと思案をしているうちに、何時しかグッと彼との距離を縮められていた…。
「自分の事より、他所ゴトの方が大切なんだ?」
「そっ、そういう訳じゃ…」
顎をクイッと引き上げられた私は、すっかり優位となった修平と向かい合わされる。
「不機嫌になる前に、俺の気持ちも察して欲しい」
「・・・え?」
「先に除け者にされたのは俺の方だろ?」
そうして発せられた落ち着いた声色は、何処となく沈んでいるように聞こえたから。
「え、ち、違うよっ…!」
事訳を話すよりも先ず、彼に抱かせてしまったあらぬ誤解に頭を振った瞬間。
「だって…、ンッ…」
至近距離で対峙する彼にグッと引き寄せられた私は、そのままキスを落とされた。
何時ものような優しいモノではなく、すぐに終えたキスに名残り惜しく感じるけれど。
押しつけられるように触れた唇からは、彼だけが持つ安定剤を処方されたよう…。
「フッ…、“その理由”は分かってるよ。
但し、色々と応える覚悟は必要かもな――」
ただ落ち着きを取り戻せたというのに、体温と彼を欲する心がヒートアップして。
「な、何に…?」
「さあね…?」
誰もを魅了するダークグレイの瞳と向けられる笑顔には、もうなす術も無いのよ…。