エリートな貴方との軌跡


ガチャリっと大きな音を立てて開かれたのは、ある役員室のひとつの部屋で。



驚くこと請け合いだよね…、いつものように態度には出ないとしても・・・




「珍しいな…、どうした?」


「いや、ね…?」


デスク上のPCに視線を落としていたらしい人に、私は苦笑して首を傾げるだけだ。



もちろん上司と部下として、仕事上での行き来なら当たり前のようにあるけれど。



仕事の枠が外れようとしている“この状況”は、皆無に等しいからムリも無い…。



「ったく、早く終わんなさいよ…!」


その微妙な空気感を切り裂くのは、まさに猪突猛進の勢いある絵美さんだけれど。



松岡さん曰く“回遊魚”にも似た彼女に対して、飄々としている修平は一枚上手だ…。




「またですか…」


「はぁ?何が言いたいワケ?」


溜め息をひとつ落とした修平の態度に、眉根を寄せたルックキラーがお出ましする。



「スマイルキラーが喜ぶだけですって」


「はっ…!?」


「だから、“秘書の枢軸”さんこそ早く戻った方が良いですよ?」


「…っ、あとは知らないわよ!?」


PCをシャットダウンして画面を閉じながら告げれば、立ち去ってしまった絵美さん…。




「修平…、どういう事?」


「フッ…、さて俺たちも帰ろうか」


そうして役員室に残された私は、今日もまた修平の一笑ではぐらかされてしまう…。




< 79 / 278 >

この作品をシェア

pagetop