エリートな貴方との軌跡
ガチャリっと大きな音を立てて開かれたのは、ある役員室のひとつの部屋で。
驚くこと請け合いだよね…、いつものように態度には出ないとしても・・・
「珍しいな…、どうした?」
「いや、ね…?」
デスク上のPCに視線を落としていたらしい人に、私は苦笑して首を傾げるだけだ。
もちろん上司と部下として、仕事上での行き来なら当たり前のようにあるけれど。
仕事の枠が外れようとしている“この状況”は、皆無に等しいからムリも無い…。
「ったく、早く終わんなさいよ…!」
その微妙な空気感を切り裂くのは、まさに猪突猛進の勢いある絵美さんだけれど。
松岡さん曰く“回遊魚”にも似た彼女に対して、飄々としている修平は一枚上手だ…。
「またですか…」
「はぁ?何が言いたいワケ?」
溜め息をひとつ落とした修平の態度に、眉根を寄せたルックキラーがお出ましする。
「スマイルキラーが喜ぶだけですって」
「はっ…!?」
「だから、“秘書の枢軸”さんこそ早く戻った方が良いですよ?」
「…っ、あとは知らないわよ!?」
PCをシャットダウンして画面を閉じながら告げれば、立ち去ってしまった絵美さん…。
「修平…、どういう事?」
「フッ…、さて俺たちも帰ろうか」
そうして役員室に残された私は、今日もまた修平の一笑ではぐらかされてしまう…。