王子様は金髪ヤンキー!?〜My last lover〜
「……クソっ!!」
休憩所を飛び出して、店長に駆け寄る。
「今日、早退させてもらえませんか?」
無理を承知でそう頼むと、店長は不思議そうに首を傾げた。
「お前もか?」
「……お前もって……他にも早退したいって奴がいるんですか?」
「美咲さんも帰りたいってさっき言いにきたぞ?」
「……美咲も……?」
でも、それは俺にとって好都合で。
「もうすぐ客の入りも落ち着くと思うし、今日は帰っていいぞ?美咲さんはよくてお前はダメっていうのもあれだしな?」
「……ありがとうございます」
自分の息子が俺の早退に絡んでいるなんて全く知らない店長。
呑気なもんだ。
俺は店長に頭を下げると、急いで休憩室に戻った。
「……――おい、ちょっと待て!」
俺と入れ違いにから事務所から出ていこうとしていた美咲を呼びとめる。
「ちょっと付き合え」
「付き合えって何よ?」
「俺が着替え終わるまで、そこで待ってろ」
「あたし、急いでるんだけど」
「1分で出てくるから」
俺は事務所でバイト用のつなぎを脱ぎ捨て、制服に着替えた。
「悪い。行くか?」
「行くってどこに?何であたしが待たされないといけないの?」
事務所を出ると、美咲は俺を睨みながら唇を尖らせた。
「お前の愛しのシュンくんが暴走しそうだから、止めてやって?」
「え……?何それ??シュンが暴走ってどういうこと?」
目を丸くして驚いている美咲。
でも、1から10まで説明している時間はない。
「とにかく走れ」
「え……?ちょっと!!」
俺は美咲の腕を強引に掴むと、そのまま勢いよく走り出した。